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奥田英朗「イン・ザ・プール」

奥田英朗さんの「イン・ザ・プール」を読みました。

イン・ザ・プール (文春文庫)
奥田 英朗
416771101X

伊良部総合病院の神経科医師、伊良部一郎のとんでも治療が愉快であると共に考えさせられる小説でした。
精神科やカウンセリングの小説と言うととかくドロドロして読後の気分が非常によろしくなくなってしまうものが多いのですが、この作品は何とも言えない爽快感があり、休むことなく読了できてしまいました。

収録作品は以下の5つ。
「イン・ザ・プール」
「勃ちっ放し」
「コンパニオン」
「フレンズ」
「いてもたっても」

心身症、ストーカー妄想、携帯電話依存症、強迫神経症など現代人にいつ現れてもおかしくない症状を持つ患者が次々の伊良部の下を訪れ、治療を受けるのです。
しかしその治療は所謂カウンセリングをするのでもなく、適切な投薬をするのでもなく伊良部が楽しいと思うことをするという欲望に従ったことしかやりません。
例えば注射針が腕に刺さっている姿を見るのがこの上もなく好きな伊良部は必要もないのに毎回看護士に患者を注射させて、その姿を見て興奮する。
友達がいない伊良部は携帯依存症の患者にひたすらメールを送ったり、きれいな患者を口説こうとしたり貢いじゃったり、患者と一緒にプールに行ったりなど、常識的な精神科医がする行動とはとても思えないものばかりです。
ところがなぜか患者の症状はいい方向に向かっていくという不思議な能力も持っているのですよ。
最初は患者の異常とも言える行動があるのですが、伊良部の行動はそれをはるかに越えた異常さを持っており、毒を以って毒を制すというような治療になっており、さらに伊良部は自分は全く治療をしているという意識はなくむしろ遊んでいるかのように見えるのがとても面白いのです。
現実には絶対にありえない事でしょうが、物語だからこそ楽しむことができるもので、実際にこの伊良部のような精神科医が自分の担当医になったとしたら無茶苦茶嫌です(笑)
しかし、精神科医小説の常識を覆すような痛快さが残るストーリーなので、どんな人にもお勧めできる作品だと思いました。
読み始めたらかなりはまると思いますよ。

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鉄道小説アンソロジー 「鉄路に咲く物語」

鉄道がテーマとなる短編集を読みました。

鉄路に咲く物語 (光文社文庫)
日本ペンクラブ
4334738974

収録されているのは以下の11篇です。

芥川龍之介「蜜柑」
浅田次郎「青い火花」
綾辻行人「鉄橋」
北村薫「夏の日々」
黒井千次「子供のいる駅」
志賀直哉「灰色の月」
西村京太郎「殺人はサヨナラ列車で」
宮本輝「駅」
村田喜代子「鋼索電車」
山本文緒「ブラック・ティー」
E・ヘミングウェイ 高見浩訳「汽車の旅」

正直全く持ってつまらないものもあり、最後まで読みことができなかったのが4篇もありました。
読んだとしても???というものもあり、どういう基準で選ばれたのかよくわかりませんでした。
アンソロジーなのでこうなってしまうのは仕方がないのかな。

さて、その中でも面白かったものが数篇あります。
まずは浅田次郎さんの「青い火花」。
とある写真館に住む3代に渡る人間模様が描かれ、ほとんど呆けてしまったおじいさんの最後の一瞬の輝きが描かれています。
昔ながらの職人的カメラマンの意地が奇跡的な一枚をもたらすのですが、そのおじいさんの言葉がひとつ印象に残っています。
いい写真を撮るのに必要なのは愛なんだ。
その愛を廃止目前の都電に傾けた最後の一枚は果たしてどのようなものだったのか。
この話は一番のお勧め作品です。
ただし、走行中の列車にストロボを焚くのは運転手の目を一瞬眩ませるので絶対にやってはいけないことだということは注記しておきましょう。

次のお勧めは西村京太郎さんの「殺人はサヨナラ列車で」。
鉄道ミステリーの大御所の作品らしく安定感はピカイチでした。

廃止となる白糠線というマイナーなローカル線が舞台となっているのもかなりいいです。

このアンソロジーに収録されている作家の作品でもっと読んでみたいと思わせれるのは上記の2人くらいでした。
最近は小説もあまり読んでおらず、フィクションの世界に入り浸ることが少なくなっているのもそう感じてしまう一因かもしれません。
この夏はこれまで以上に小説も読んでみようかなとも思っています。

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修学旅行の最後の夜がミステリーに! 村崎友「修学旅行は終わらない」

久々に小説を読みました。

村崎友さんの「修学旅行は終わらない」です。

本屋さんで平積みになっていたのがふと目に入って思わず手にとってみると、なかなか内容がおもしろそうでしたので即購入しました。

高校2年生の京都への修学旅行での最後の夜の出来事が描かれた作品なのですが、主人公は一人ではありません。

登場人物全てが主人公で、それぞれの視点がひとつの章でまとめられて、最終的に物語はひとつのゴールへと進んでいくのです。

たくさんの視点があるので物語が分散してしまいそうですが、決してそうではありません。

おそらくわずか1時間くらいの出来事が物語になっており、それをそれぞれの視点から語っていくと、何でもない出来事が実は恐ろしいほどにミステリーの要素を持ってくるという巧妙な描かれ方をしているので、物語にどんどん引き込まれていきます。

そしてひとつひとつ謎が解けていく様子が痛快であり、スピード感を失わない文章により一気に読めてしまいます。

ストーリー自体の面白さがある一方、登場人物の魅力の高さもやはり特筆すべきところでしょう。

一人ひとりのキャラが立っているので、誰に感情移入して読み進めていくかはおそらく人それぞれなのではないかな。

また、高校2年生というとどうしても異性との関係に興味が出てくる年頃で、男子からの視点、女子からの視点、さらに先生からの視点と、この時期の恋愛について語られていくのがとても興味深いです。

みんな真剣なんだけどどこかずれていて、そのズレに一生懸命悩んだりして、でも悩んでもなかなか結論に達することができなかったりして、きっと昔の自分のことを思い出して共感できる部分もあると思いますよ。

もう修学旅行に行くことのない大人にも読んで欲しい作品だし、これから修学旅行に行く中学生、高校生にもぜひ読んで欲しい作品ですね。

修学旅行での消灯後の楽しみを色々と思い出して、せつないような懐かしいような感覚が出てくる作品です。

〔MF文庫ダ・ヴィンチ〕修学旅行は終わらない (MF文庫 ダ・ヴィンチ む) (MF文庫 ダ・ヴィンチ む 1-1) 〔MF文庫ダ・ヴィンチ〕修学旅行は終わらない (MF文庫 ダ・ヴィンチ む) (MF文庫 ダ・ヴィンチ む 1-1)
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とくとみ
徳富政樹(とくとみ)
Nikon D610で旅先や東京の様々な風景を撮影しています。撮影テーマは「東京路地裏散歩」「Tokyo Train Story」。ネコや井戸ポンプなどの下町風景が大好き。第2回、第5回タムロン鉄道風景コンテストで佳作に入賞。写真使用に関するお問い合せ、サイト内への広告掲載、記事広告、商品レビュー依頼、取材依頼などのご相談はこちらからお願いします。




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