2018年3月16日に国立新美術館にて第21回文化庁メディア芸術祭記者発表会が開催されました。そこでアート、エンターテインメント、アニメーション、マンガの各部門における受賞作品が発表されました。
文化庁メディア芸術祭とは平成9年度からスタートしたもので今年度は世界の98の国と地域から4000以上の作品の応募があったそうです。昨年よりも10以上の参加地域が増えたことから年々国際的な評価が高まってきていると考えられています。この日登壇したのは、運営委員から多摩美術大学長の建畠晢さん、審査委員からはアート部門が中ザワヒデキさん、エンターテインメント部門は工藤健志さん、アニメーション部門が横田正夫さん、マンガ部門が門倉紫麻さんです。
それでは今年の各部門における受賞作品を見ていくことにしましょう。
Sponsored Link
アート部門
・大賞
チェニジアのHaythem ZAKARIAさんによる「Interestices / Opus Ⅰ – Opus Ⅱ」です。作者の方よりビデオレターが届きました。
「異文化をつなぐ架け橋となり、我々をつなげることになるでしょう。プロジェクトの第三形態も考えている」とのことで、さらに作品に広がりが出てくるようです。
Interstices Opus II // Teaser from Haythem Zakaria on Vimeo.
中ザワ委員の講評によると、メディアートというよりも、純粋にアートとして美術としての力を感じたそうです。
会場ではデモ映像も見ることができました。
これは小さなモニターで騒々しい会場内で見るのではなく、大スクリーンの映画館でじっくりと見てみたい作品ですね。
優秀賞及び新人賞は以下のものです。
・優秀賞
「アバターズ」 菅野創/やんツー
「進化する恋人たちの社会における高速伝記」 畝見達夫/ダニエル・ビシグ
「水準原点」 折笠良
「Language Producing Factory」 DAI Furen(中国)
・新人賞
「I’m In The Computer Memory!」 会田寅次郎
「Panderer(Seventeen Seconds)」 Gary SETZER(アメリカ)
「The Dither is Naked」 YANO(スイス)
最後に中ザワさんによるアート部門の講評です。メディアアートは現代アートの一角なのかそうではないのかが問題ではあります。「デジタルなもの」という規定がなくなって2年目ですが、それ以前と同じような作品が応募されてきています。しかし、アートとして評価をしたいと思っており、現代美術の世界においてそれほど自分ごとと考えられていないので、今後変えていかなくてはいけないと語っていました。
エンターテインメント部門
・大賞
『人喰いの大鷲トリコ』開発チームによる「人喰い大鷲トリコ」です。
代表の上田さんによるとトリコの自然な動きを出すために膨大な時間を使ったそうです。
工藤委員の講評では「ゲームが新しいステージに上がった。映画を見ているようだけれども、一冊の良質な文学を読んでいるかのよう。行間でキャラクターとの感情的交流がある」と語られました。
・優秀賞
「FORESTA LUMINA」 『FORESTA LUINA』制作チーム(カナダ)
「INDUSTRIAL JP」
「PaintsChainer」 米辻泰山
「Pechat」 『Pechat』開発チーム
・新人賞
「盲目の魚-The Blind Fish-」 石川泰昭/ミカツキフタツ/Keishi Kondo
「Dust」 Maria JUDOVA/Andrej BOLESLAVSKY(スロバキア)
「MetaLimbs」 佐々木智也/MHD Yamen SARAIJI
この中から新人賞のMetaLimbsという作品が舞台上で披露されました。
「あなたの体に腕を増やす」がコンセプトで、ただ取り付けるだけでなく、自分の体のように操作する目的です。足の指の動きを感知してアームが動くのだそうですよ。初めて操作する人でもちょっと練習すれば思い通りに動かすことができるようになるそうです。
工藤委員より。「昨年はシンゴジラとポケモンGO。今年の受賞作には新しい価値観を切り開く力がある。テクノロジーを使った作品が多数応募された。倫理的な批判もある。善にもなれば悪にもなる。エンターテインメントはより多くの人々の共感性に重きを置いている。受賞は結果ではなく、これをきっかけに議論や考察の一歩となる。これから先のテクノロジー、次の時代をイメージするきっかけになればいいと思う」。
アニメーション部門
・大賞
片淵須直さんの「この世界の片隅に」。
クラウドファウンディングから始まり、ゲリラ的宣伝を行ったそうです。ツイッターをはじめとしたデジタル、口コミのアナログを駆使し、一昨年の発表から今年も上映されています。送り手と受け手の融合がなされて、映画を支え続けてくれていると作者からのメッセージが披露されました。
横田委員より「困難な状況の中、日常からファンタジーを見出す。何気ない動作から美しさが見られる」と講評がありました。
そして大賞はもう1作品。2作品の同時受賞です。
湯浅政明さんの「夜明け告げるルーのうた」です。
湯浅監督から「子供でも大人でも楽しめる内容。生と死も作品の重要テーマ。」と紹介がありました。
横田委員からは「疎外感をもった若者が他者と出会うことで現実に向かい合う。アニメーションの動きの面白さで描いている」と講評がありました。
・優秀賞
「ハルモニア feat.MAKOTO」 大谷たらふ
「COCOLOR」S 『COCOLORS』制作チーム
「Negative Space」 KUWAHATA Ru/Max PORTER
・新人賞
「舟を編む」 黒柳トシマサ
「The First Thunder」 Anastasia MELIKHOVA(ロシア)
「Yin」 Nicolas FONG(フランス)
横田委員より「長編部門で見応えがある作品が多かった。甲乙つけがたいということで2作品が大賞受賞。両者とも女性の生き様に共感、女子力が日本のアニメの特徴になっている」と講評されました。
マンガ部門
・大賞
池辺葵さんの「ねぇ、ママ」です。
池辺さんのコメントは「ただただ嬉しい」というものでした。
ねぇ、ママ (A.L.C.DX) | ||||
|
門倉委員からは「大人へのエールになる。選考では分析的ではなく「いいよね」というエモーショナルなコメントが多かった」と講評がありました。
・優秀賞
「銃座のウルナ」 伊図透
「ニュクスの角灯」 高浜寛
「夜の目は千でございます」 上野顕太郎
「AIの遺電子」 山田胡瓜
・新人賞
「甘木唯子のツノと愛」 久野遥子
「バクちゃん」 増村十七
「BEASTARS」 板垣巴留
門倉委員からは「ウェブ発の作品が最終選考まで残るケースが少なかった。最近はツイッター発のマンガがあるのに、ここに入ってくるものが少ない。来年度からは取りこぼしがないようにしたい」とのことでした。
功労賞
功労賞は実業家の田宮俊作さん、漫画研究者/同社者大学教授/マンガ家の竹内オサムさんが選ばれました。
第21回文化庁メディア芸術祭受賞作品展
今回発表された受賞作品の展示が2018年6月13日(水)から24日(日)まで国立新美術館等で開催されます。受賞作品の展示の他、様々なイベントも用意されるそうです。入場無料です。詳細はこちらから。面白い作品揃いなので、ぜひ会場に足を運んでみてください。
→第21回文化庁メディア芸術祭 受賞作品展
似たテーマの記事はこちら
この記事の筆者は徳富政樹(とくとみ)です。ブロガー、街歩き案内人、なんちゃってフォトグラファー。日本全国を旅しながら写真撮影をしています。マニアックな場所や美味しいもの、鉄道、井戸ポンプ、ネコが好きです。トップページ | 旅の全記録 | フォトウォーク | 登山の全記録
記事内容や写真使用に関するお問い合せ、記事広告の作成、広告掲載、取材依頼のご相談などは下記リンクからお願いします。イベント取材、旅レポート、製品レビューなどの依頼は大歓迎です。
→お問い合わせメールフォーム
詳細なプロフィールはこちらから。
→プロフィール