街ですれ違った人の顔を覚えていることができますか?
おそらくすれ違った数秒後にはすっかり忘れてしまっていることでしょう。
それにすれ違った人の顔について後から尋ねられるというケースは人生においてほとんどないかもしれません。
しかし何らかの事件や事故を目撃し、その当事者についての証言を求められるということが生きているうちに1回は経験することかもしれません。
その時、人は正確に以前見た人物の顔を覚えているものなのでしょうか。
このことは心理学では認知心理学の分野で「目撃者の証言」としてよく議論されています。
その研究結果からはストレスがかかる状況において人の顔の目撃証言はあまり当てにならないという結論が導き出されてきています。
さらに、同人種間よりも、人種が異なる顔となるとさらに成績が悪くなってしまうという研究結果もありました。
ただしこの異人種間の顔記憶に関しては、大人よりも子供の方が成績がいいと言われてきました。
なぜならば大人は日々同人種間との付き合い経験を重ねて、顔の特徴を思い出すときの代表的なものは同人種の顔となってしまい、子供はまだ同人種の顔を見る経験が少ないので異人種の顔でも素直に記憶ができるからだと。
このような研究はJ. Chanceが行っており、日本でもこの結果を引用している文献は多数ありました。
しかし、最近この結果に反する研究が発表されました。
それがB. CorenblumとChristian Meissnerの研究です。
→Problems in identifying people of other races: Are kids as bad as grown-ups?
ここではJ. Chanceの研究には実験手続きに問題があったのではないかと考えています。
J. Chanceの実験で用いられた顔写真は大学の卒業アルバムからのもので、それぞれの人の服装や背景が異なっており、それが顔の記憶以外の手がかりになっていたのではないかと。
そこでB. CorenblumとChristian Meissnerは写真に写っている人の服装はグレイに統一して、背景ももちろん統一し、顔以外での判別ポイントをなくすというものでした。
その結果大人でも子供でも同人種間の成績と異人種間での成績に差はなくなったのです。
つまり、同人種の顔をたくさん見る経験を持っていると異人種よりも同人種の顔の方が記憶に残りやすいというこれまでの考え方は否定されたわけです。
今では日本国内でもたくさんの外国人の方がいます。
残念なことにその人たちの中にも犯罪を犯す人もいます。
外国人の犯罪現場を目撃し、その証言をするということになったとしても、外国人の顔だから覚えにくいのだということはないと考えられます。
むしろそのような先入観があることによって、記憶が変容してしまう可能性もあるのではないでしょうか。
さらに詳しい研究手続き、結果についてはこちらの原文からどうぞ。
→Problems in identifying people of other races: Are kids as bad as grown-ups?
目撃証言の心理学 厳島 行雄 仲 真紀子 原 聡 by G-Tools |
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この記事の筆者は徳富政樹(とくとみ)です。ブロガー、街歩き案内人、なんちゃってフォトグラファー。日本全国を旅しながら写真撮影をしています。マニアックな場所や美味しいもの、鉄道、井戸ポンプ、ネコが好きです。トップページ | 旅の全記録 | フォトウォーク | 登山の全記録
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