産経新聞を読んでいてインフルエンザがストーリーで出てくる志賀直哉の「流行感冒」という短編が紹介されていたので、その話が収録されている本を入手しました。
新型インフルエンザが日本国内でも感染例が見つかるという昨今ぜひ読んでおきたいと思ったのです。
小僧の神様―他十篇 (岩波文庫)
志賀 直哉
たぶん中学生くらいの時に全く同じ本を買った気がしないでもないですが、もうすっかりと内容は忘れているのでまあいいでしょう。
本書に収録されているのは「小僧の神様」「正義派」「赤西蠣太」「母の死と新しい母」「清兵衛と瓢箪」「范の犯罪」「城の崎にて」「好人物の夫婦」「流行感冒」「焚火」「真鶴」の11篇になります。
まずは一番最初の目的であった「流行感冒」を読んでみました。
この作品が書かれたのは大正8年のことで、タイトルにもなっている流行感冒とはインフルエンザのスペイン風邪のことです。
この流行感冒は多くの死者を出すほどの猛威を奮っていたわけで、この話の主人公は自分の幼い子供が感染しないよう、妻にも女中にも相当の注意をするよう言いつけるのです。
毎年家族で見に行くはずの芝居は人々が大勢集まるので、それだけ感染のリスクが高くなります。
そこで芝居見物を中止するわけですが、女中の一人がこっそりと見に行ってしまうのです。
しかもそれを咎めた主人公に対して嘘をついて芝居は見に行っていないと言い張るのですが、ついにはその嘘も露見して暇を出されそうになります。
そんな時主人がインフルエンザにかかり、子供、妻、もう一人の女中も感染してしまうのです。
そんな中で一人元気なこの嘘をついて芝居を見に行った女中が献身的な働きをして主人に見直されるというのがストーリーでした。
まあインフルエンザというよりも主人と使用人の信頼感というものがテーマで、それを引き立てるのにインフルエンザが持って来られているのかと思いました。
でも、大正時代当時のインフルエンザに対する人々の恐怖心というものもよく伝わってくるもので、現代とそれはほとんど変わらないものなのだということがよくわかりますよ。
その他の話を全て読んでみて出てきた感想は、いくら短編でもなんだかみなあっけなく話が終わってしまっているなということです。
いやにあっさりしている気がしたけど、これが志賀作品の特徴なんですかね。
話が始まるとそのストーリーにのめり込まされるのに、最後にスパッと切られてしまうのがちょっと残念な気がしました。
志賀直哉の「流行感冒」を読むならこちらの本でどうぞ。
→小僧の神様―他十篇 (岩波文庫)
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この記事の筆者は徳富政樹(とくとみ)です。ブロガー、街歩き案内人、なんちゃってフォトグラファー。日本全国を旅しながら写真撮影をしています。マニアックな場所や美味しいもの、鉄道、井戸ポンプ、ネコが好きです。トップページ | 旅の全記録 | フォトウォーク | 登山の全記録
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