昨年から昭和の風景を求めてよく都内の街歩きをしています。
例えば、雑司が谷、神楽坂、月島、神保町、西新宿などをこれまで歩いてきました。
・雑司が谷散歩 その1
・神楽坂路地裏散歩 その1
・月島散策
・神保町の路地裏にある昭和の風景 ミロンガ・ヌオーバ
・現在の新宿に昭和の風景が残って いた! 西新宿4丁目路地裏散策 その1
たまにあたかも時間を越えてしまったかのような光景に出くわすこともありますが、そういう風景はなかなか見ることができるものではありません。
そこで最近は昔の東京の風景を集めて写真集を購入するようになったのです。
先日買ったのは岩波写真文庫の復刻版「東京ー大都会の顔ー」です。
本書は昭和27年(1952年)に出版されたもので、その前年にあたる昭和26年(1951年)に東京の街のあちこちを撮影したと思われる写真が多数掲載されています。
戦後の復興をとげている、まさにその最中の東京の様子がよくわかる貴重な資料写真が満載なので、これまで教科書の簡単に記述された文章でしか知らなかった当時の様子がものすごくよくわかるのです。
写真集の構成としては5つのパートに分かれています。
1.都会の巨大なる貪欲
2.都会の血管神経系統
3.都会の典型的な容貌
4.都会の集団的な意志
5.都会の血球、都会人
この中で一番印象的なのは「3.都会の典型的な容貌」で、オフィス街、商業地域、工業地域、下町・山の手の住宅地、埋立地などが紹介されています。
いずれも現在の様子からははるかにかけ離れた風景なのですが、特に江東区の工業地域と青山のバラックの姿には驚かされました。
江東の工業地域は煙突が林立し、そこから煙がこれでもかというくらい吐き出されて、公害ということはまるで考えられていない様子が見受けられました。
きっと当時の空気は今より圧倒的に悪くて、数十メートル先も満足に見ることができなかったのではないかと想像できます。
そこに復興の歴史の端緒を見たような気がしました。
また青山は現在のようなおしゃれな地域では全くなく、低層のバラックが立ち並び、「スラム」と表現されてもいました。
たったの50数年前の話なのに今からは全く想像できないその姿に愕然とさせられました。
また、僕の住んでいる地域も本書に掲載されているのですが、「貧民街」とキャプションされていました。
このように現在の豊かさとは正反対の東京の姿を垣間見える本書はかなり貴重な資料集ではないかと思います。
現在の繁栄はこのような歴史の積み重ねよって生まれたものであるので、東京に住んでいる人、または東京に関心のある人にはぜひ手にとって欲しい写真集だと思います。
小中学校の社会科の時間で取り上げるというのもひとつのアイデアだと思いました。
東京―大都会の顔 (岩波写真文庫―川本三郎セレクション) 岩波書店編集部 |
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この記事の筆者は徳富政樹(とくとみ)です。ブロガー、街歩き案内人、なんちゃってフォトグラファー。日本全国を旅しながら写真撮影をしています。マニアックな場所や美味しいもの、鉄道、井戸ポンプ、ネコが好きです。トップページ | 旅の全記録 | フォトウォーク | 登山の全記録
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