また心が震えるような素晴らしい写真集に出会いました。
池田信さんの「1960年代の東京 路面電車が走る水の都の記憶」です。
池田さんはプロのカメラマンではなく、都立日比谷図書館の職員だった1960年代に東京のたくさんの街を撮影した言わば素人なのですが、その街を見つめるたんたんとした視点にいつの間にか1960年代の東京に自分がいるのではないのかという錯覚を覚えてしまうのです。
掲載されている写真には特に感情が込められているというわけではなく、むしろ冷静に街の様子を収めているのですが、それが客観的な資料写真としてこの写真集の価値を高めている気がするのです。
タイトルの副題にあるように、ここでは水路が中心に撮影されています。
僕らのような若い世代は、東京の水路と言うと隅田川、荒川、江戸川、多摩川といったものを思い浮かべますが、1960年代当時はもっとたくさんの川が東京の街を流れていたのです。
今は1系統しかない都電が都内のあちこちを走っていたようにです。
そんな川のある東京の風景を、路面電車が走る都電の風景を、戦前戦後の美しい建築物がたくさん残る東京の風景を池田さんは撮影しているのです。
特に日本橋周辺が気になるポイントだったらしく、そこを重点的に撮影しています。
当時は東京オリンピック開催を控えて、道路の拡張、高速道路の建設、そして水路の埋め立てが始まっていた頃で、それらによって失われていく東京の風景を忘れてはいけないと思ったかのようにたくさんの写真を残しています。
僕はこの写真集を見て思いました。
確かに今の東京はきれいで便利でどこへ行くにも早く行けますが、しかしここで掲載されている写真の東京のような美しさがないと思うのです。
街の個性が失われ、どこでも同じ風景に見えてしまうのです。
もしかしたらこれから東京を美しい街に変えていくのはもう難しいことなのかもしれません。
でも僕も今まだかろうじて残っているであろう東京の風景を、見て、感じて、記録していこうと思います。
池田さんが40年前に歩いたように、僕も東京の街を歩いていこうと思うのです。
美しい東京に想いを馳せて。
似たテーマの記事はこちら
この記事の筆者は徳富政樹(とくとみ)です。ブロガー、街歩き案内人、なんちゃってフォトグラファー。日本全国を旅しながら写真撮影をしています。マニアックな場所や美味しいもの、鉄道、井戸ポンプ、ネコが好きです。トップページ | 旅の全記録 | フォトウォーク | 登山の全記録
記事内容や写真使用に関するお問い合せ、記事広告の作成、広告掲載、取材依頼のご相談などは下記リンクからお願いします。イベント取材、旅レポート、製品レビューなどの依頼は大歓迎です。
→お問い合わせメールフォーム
詳細なプロフィールはこちらから。
→プロフィール